相続登記の必要書類

相続登記(相続による不動産の名義変更)には、多くの書類が必要です。

相続登記の手続きは、遺言に基づいて申請する場合、遺産分割協議で決まった内容に基づいて申請する場合、または法定相続分に基づいて申請する場合など、状況に応じて異なる書類が求められます。

ここで紹介する必要書類は、配偶者や子どもが相続人となる一般的な相続登記を想定しています。故人の兄弟姉妹が相続人になる場合など、特別なケースでは、さらに追加の書類が必要になることがあります。

相続登記とは?

相続登記とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた不動産の名義を、相続人の名義に変更する手続きのことです。

つまり、不動産の所有権を相続人に移転することを法務局に登記することで、正式に相続人がその不動産の所有者になったことを証明する手続きです。

相続登記の大まかな流れは、以下のとおりです。

1. 被相続人の戸籍謄本等の取得

相続登記の手続きには、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本が必要です。

また、相続人全員の戸籍謄本や住民票も必要になります。

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2. 遺産分割協議書の作成

遺産分割協議が必要な場合、相続人全員で協議し、不動産を誰が相続するか決める必要があります。遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印します。

遺言がある場合や、法定相続分で進める場合は、協議は不要です。

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3. 法務局に登記申請

必要書類とともに、法務局に相続登記の申請を行います。登記申請書、戸籍謄本、遺産分割協議書、固定資産税評価証明書などを提出します。

登記申請は、不動産が所在する管轄の法務局で行います。

相続登記の必要書類一覧

遺言による相続登記の場合

遺言書がある場合、通常はその遺言の内容に従って相続登記を申請します。

一般的に必要となる書類は以下のとおりです。

  • 遺言書(自筆証書遺言・公正証書遺言など)
    自筆証書遺言の場合は家庭裁判所で検認を受けたものを提出します。
  • 被相続人に関する書類
    ①除籍謄本(被相続人について死亡の記載があるもの)
    ②住民票の除票または戸籍の附票
  • 不動産を取得する相続人に関する書類
    ①戸籍謄本(被相続人の死亡後に取得したもの)
    ②住民票または戸籍の附票
  • 不動産に関する書類
    ①不動産登記簿謄本(登記事項証明書)
    ②固定資産税納税通知書や固定資産評価証明書(不動産の評価額を確認するため)
  • 登記申請書

遺言による相続登記では、遺言で不動産の継承者として指定された人に所有権が移転します。

そのため、遺言者が死亡した事実を証明できればよく、出生から死亡までの全ての戸籍謄本を揃える必要はありません。また、不動産の取得者に関しては、遺言者の死亡後に取得した最新の戸籍謄本を提出すれば十分であり、不動産を取得しない他の相続人の戸籍謄本を添付する必要はありません。

なお、自筆証書遺言については、家庭裁判所で検認を受けたものでなければ、相続登記などの手続きを進めることはできません。

ただし、遺言書保管制度を利用して法務局で保管されている自筆証書遺言であれば、検認手続きは不要です。

遺産分割協議による相続登記の場合

遺言書がない場合で相続人が複数いる場合、遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するかを決めることができます。相続人全員の同意を得て不動産の取得者が決まったら、その内容に基づいて相続登記を行います。

一般的に必要となる書類は以下のとおりです。

  • 被相続人に関する書類
    ①被相続人の除籍謄本、改製原戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本)
    ②住民票の除票または戸籍の附票
  • 相続人に関する書類
    相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡後に取得したもの)
  • 遺産分割協議書
    相続人全員の署名・実印による押印が必要です。
  • 相続人全員の印鑑証明書
    発行期限の制限はありません。発行後3か月以上経過していても可。
  • 不動産に関する書類
    ①不動産登記簿謄本(登記事項証明書)
    ②固定資産税納税通知書や固定資産評価証明書(不動産の評価額を確認するため)
  • 登記申請書

遺産分割協議による相続登記は、遺言による相続登記と比べて必要な書類が多くなります。

まず、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要です。

また、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書も添付する必要があります。不動産を取得しない相続人の戸籍謄本が求められるのは、遺産分割協議に相続人全員が参加しているかどうか確認をするためです。

法定相続分による相続登記の必要書類

法定相続分に基づく相続登記では、遺産分割協議を行わずに、法律で定められた相続分に基づいて登記を進めます。

一般的に必要となる書類は以下のとおりです。

  • 被相続人に関する書類
    ①被相続人の除籍謄本、改製原戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本)
    ②住民票の除票または戸籍の附票
  • 相続人に関する書類
    ①相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡後に取得したもの)
    ②相続人全員の住民票の写し
  • 不動産に関する書類
    ①不動産登記簿謄本(登記事項証明書)
    ②固定資産税納税通知書や固定資産評価証明書(不動産の評価額を確認するため)

法定相続分に基づく相続登記は、相続人が法定の割合に従って不動産の持分を取得するため、遺産分割協議書の作成や印鑑証明書の提出は不要です。

ただし、相続人全員の資格を確認するための戸籍が必要です。

特殊なケースによる相続登記の場合

相続登記には、標準的なケース以外に、特別な手続きや追加書類が必要となる特殊なケースがあります。

以下に、代表的な特殊ケースとその必要書類・手続きを紹介します。

1. 相続人の中に未成年者がいる場合

未成年者は自ら意思表示を行うことができないため、親権者が代理で手続きを行います。

ただし、親権者と利益が対立する場合(たとえば、親権者自身も相続人である場合)、特別代理人を家庭裁判所に申し立てて選任する必要があります。

2. 相続人が外国に居住している場合

相続人が日本以外に居住している場合、印鑑証明書や住民票の代わりに現地の大使館などが発行する在留証明書やサイン証明書が必要です。

3. 相続人が相続放棄した場合

相続放棄をした人がいる場合、家庭裁判所から発行される「相続放棄申述受理証明書」または「相続放棄申述受理通知書」を提出する必要があります。

相続放棄をした人は、最初から相続人ではなかったとみなされるため、遺産分割協議に参加する必要はありません。

ただし、相続放棄によって新たに相続人が発生する場合、その新たな相続人が代わりに相続手続きを進める必要があります。

相続登記についてのよくある質問

Q
不動産の権利証が見当たらないのですが
A

相続登記の手続きでは、権利証(登記済証または登記識別情報)は必ずしも必要ではありません。相続登記では、被相続人の戸籍謄本や住民票などにより、登記申請をすることが可能です。

ただし、登記簿上の所有者の住所と、住民票の除票に記載された被相続人の住所が一致しない場合などは、権利証が必要になります。

Q
相続登記は自分でできますか?
A

相続登記は自分でも行うこともできますが、戸籍謄本などの書類の準備や、法務局での手続きが必要です。

費用を抑えるメリットがある反面、手間と労力がかかることを考慮し、自分で手続きを行うか、司法書士などの専門家に依頼するかを検討すると良いでしょう。

Q
添付書面に有効期限はありますか?
A

戸籍謄本や住民票、印鑑証明書に有効期限はありません。

ただし、戸籍謄本に関しては、被相続人の死亡後に取得したものが必要です。 固定資産税納税通知書や固定資産税評価証明書は、最新年度のものが必要です。

まとめ 相続登記で困った場合は、司法書士に相談を

相続登記に必要な書類は、状況によって異なるため、自分で書類を揃えるのは大変です。遺産分割協議書や登記申請書の作成も必要になりますので、法律知識も求められます。

もし必要書類や手続きについて不安や疑問がある場合は、一度専門家に相談することをおすすめします。専門家に相談や依頼をすることで、不明点が解消されるだけでなく、複雑な手続きを任せることも可能です。

自分で対応するのが難しいと感じる方や、相続登記に関してアドバイスを受けたい方は、司法書士などの専門家への依頼を検討してみてください。

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